平成29年12月8日,厚生労働省は社会保障審議会生活保護基準部会において,生活扶助基準の検証結果案,有子世帯に対する扶助・加算に関する検証結果案を提出した。報道によれば,生活扶助費を1割程度引き下げ,母子加算も大幅に引き下げる方向で検討に入ったとのことである。
前回(2013年)行われた基準見直しにより,生活扶助費は最大10%も大幅に削減されたばかりである。その検証が十分になされていないにもかかわらず,今回更なる引き下げを行うことは,憲法25条が保障している「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」をはく奪する結果を招くことになり,許されるものではない。
当協議会は次に述べる理由から今回の生活保護基準の引き下げには断固反対する。
1 前回の見直しの際にはデフレを理由として生活扶助費の引き下げを行っている。近年は物価が継続的に下落している局面にはなく,基準を引き下げる理由が明らかに矛盾している。
2 生活保護の捕捉率は2割程度と言われている。このような状況の中で,生活保護を利用していない低所得者層との比較により生活保護基準を見直し,最低生活費を引き下げるのであれば,最低生活費は際限なく減少していくことになる。3 生活保護基準の引き下げは,最低賃金,就学援助の給付対象基準,個人住民税の非課税
基準,国民健康保険料等の減免基準といった国民の生活を支える様々な施策に影響を与えるものであり,生活保護を利用していない低所得者層の生活水準の更なる引き下げにつながるものである。
4 格差と貧困の拡大が社会問題となっている中,子どもがいる世帯の生活扶助費を10%以上も削減することは,貧困の連鎖を解消しようとする国の方針に反するどころか,貧困の連鎖を助長するものである。
平成29年12月25日
東京青年司法書士協議会
会長 矢島 秀樹